リリー・ノイス
2024年11月2日
核拡散に反対する取り組みでは、これまで複数の重要人物や団体が英雄として登場し、世界規模の平和と安全保障を提唱してきた。これらの個人や団体は様々な努力を通じて軍縮を推進し、核兵器の危険性に対する認識を高め、核拡散を防止するための国際協力を促進する上で重要な役割を果たしてきた。
核不拡散運動で最も影響力のある団体のひとつが、広島と長崎における原爆の被害者の生存者により結成された日本被団協である。日本被団協の使命は生存者である“被爆者”の証言を保存・共有し、世界で核戦争の惨禍を風化させないことである。そしてこれらの証言を保存することで核兵器がもたらす破滅的な結末がすぐ身近に起こり得ることを示し、そのような悲劇が二度と起こらぬように世界的なコミットメントを育んでいる。日本被団協の提唱は、核戦争がもたらすのは目前の破壊だけではなく、世代や地域社会、人類の道徳的基盤にまでも影響を及ぼすと強調している。
同じく核不拡散の取組みに大きく貢献したのは、「メガトンをメガワットへ」計画を主導した物理学者のトーマス・ネフである。1993年から2013年まで実施されたこの画期的なイニシアチブは、解体されたソ連の核弾頭から500トンの高濃縮ウランを低濃縮ウランに希釈することに成功し、それらは原子力発電所の燃料として使用された。核弾頭を民生用核燃料に転換することで、ネフによる計画は世界の核兵器の備蓄を削減しただけでなく、核エネルギーがいかに平和的に利用できるかを示した。この計画は20年間にわたり、米国で発電された電力のおよそ10%を供給し、安全保障上の懸念とエネルギー需要の対処に科学と外交がいかに連携できるかを例示。
米国のビル・フォスター下院議員は、政治の舞台で核不拡散を強く訴える人物として現れた。物理学を学んだフォスターは専門知識を生かして核軍縮をめぐる政策議論を形成してきた。とりわけ、戦略核兵器の削減と制限を目的とする米ロ間協定である新戦略核兵器削減条約(新START)をロシア側が停止したことを批判してきた。また、フォスターは制裁解除と引き換えにイランの核能力を抑制しようとしたイラン核合意(JCPOA)といった外交努力も支持してきた。フォスターの尽力は、核軍備管理のような複雑な技術的問題には科学と地政学の両側面を深く理解する必要があるという政策立案における科学的知見を踏まえたリーダーシップの重要性を示した。
歴史的に、核軍備管理におけるロナルド・レーガン大統領の功績に代表されるように、核不拡散は米国では超党派の支持を集めてきた。レーガンはしばしば強固な反共主義者だとされるが、核兵器がもたらす存亡の危機を認識していた。レーガン政権はソ連との間で重要な軍備管理協定を進め、とりわけ1987年の中距離核戦力(INF)条約は核ミサイルの全廃を定めた。レーガンの「核戦争では勝利することはできない、そして決して戦ってはならない」という有名な宣言は、冷戦の緊張下においても核兵器の備蓄を削減するという自身の決意を強調するものだった。その努力はその後の軍備管理協定への道を開き、反核運動が政治的イデオロギーを超越することを実証した。
著名な化学者でノーベル賞を二度受賞したライナス・ポーリングも反核運動に多大な貢献をした人物である。ポーリングは核兵器実験に反対する献身的な提唱者で、放射性降下物がもたらす健康や環境中の危険性に関する嘆願書をまとめて訴え続けた。その努力は大気圏内核実験を禁止する1963年の部分的核実験禁止条約に結実した。ポーリングの活動は、科学が紛争ではなく平和のための力になれるという可能性を強調している。彼の提唱は、科学者がその発見を人類の向上のために確実に利用する特別な責任を負っていることを再認識させるものだ。
最後に紹介するのは、第二次世界大戦中にマンハッタン計画を率い、世界初の原子爆弾の開発に貢献した物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの複雑な功績である。オッペンハイマーは自身が開発に貢献した兵器の破壊力に恐怖を抱き、テクノロジーの安全かつ倫理的な使用の提唱に晩年の人生の大半を費やした。オッペンハイマーの業績は、科学者の倫理的責任の議論を刺激し続け、その功績は孫のチャールズ・オッペンハイマー氏に引き継がれている。チャールズ氏は、核テクノロジーの責任ある利用を推進する「オッペンハイマー・プロジェクト」を通じて家族の使命を引き継いでおり、核テクノロジーは気候変動をはじめとする現代の国際的課題に取り組む上で有益な力になりうると主張している。
これらの人物や組織は、個人の行動、科学的発見、政治的主張、あるいは集団的記憶など、いずれを通じてであれ、誰もがより安全な世界を構築するために果たす役割を担っていることを私たちに再認識させる。クリーン・エネルギーが普及し壊滅的な紛争のリスクが減った核兵器のなき未来への道には、責任を共有することが必要だ。それは国家を対立させるゼロサム・イデオロギーを否定し、相互の進歩、協力、安全保障を志向するものである。